1. ホーム
  2. 国連開発計画(UNDP) 駐日代表事務所 コンサルタント 小原 愛氏 インタビュー

one mile wear by POC Creative Director Interview

国連開発計画(UNDP)が主導する、事業としての成功と開発途上国への貢献と同時に実現するビジネスを促進する世界的な取り組み「ビジネス行動要請(Business Call to Action: BCtA)」。POCプログラムは、2012年8月、日本企業としていち早くそのモデルケースとして承認された。 ビジネスの社会的意義が重要性を増しているいま、途上国開発とビジネスの関係性について、UNDP 駐日代表事務所でBCtAを推進する小原愛氏に話を伺った。

—最初に、UNDPとBCtAについて教えて下さい。

 子どもの支援を行う国連児童基金(UNICEF)や食糧支援を行う国連世界食糧計画(WFP)など、国連には様々な専門的な機関がある中で、国連開発計画(UNDP)はさまざまな開発課題を包括的に解決する活動を、世界177の国・地域で実施しています。また、途上国各国で開発支援を行う際の国連機関の調整役も担っています。

 日本はUNDPにとって最大の資金拠出国であり、駐日代表事務所は日本政府との折衝をはじめ、ニューヨークの本部、そして世界中の現地事務所との連携、民間セクターやNGO、学術機関とのパートナーシップの構築、そして、UNDPの活動を広く日本の皆さんに知って頂くための広報活動を行っています。
 BCtAは、UNDPの民間連携における主な活動の一つで、事業としての成功と開発途上国への貢献を同時に実現するビジネスを促進するための世界的な枠組みです。「行動要請」と表現しているのは、何らかの基準や規制ではなく、国際的に求められている要請に企業に自主的に応えてもらおうという意図です。
 BCtAの誕生のきっかけは、国際的な開発目標である「ミレニアム開発目標(MDGs)」を2015年までに達成するためには、国連や政府だけでなく、民間セクターとの連携を強めていく必要があるということをコフィ・アナン前国連事務総長が2004年に唱えたことに遡ります。その後2007年に、パン・ギムン国連事務総長とゴードン・ブラウン前イギリス首相によって、民間セクターとの連携に関する国際的な枠組みの必要性が提案され、2008年、世界を代表する60の企業経営者が集まってBCtA宣言に署名し、BCtAが発足しました。

国連開発計画(UNDP) 駐日代表事務所 コンサルタント 小原 愛氏インタビュー1

—世界でどのような活動をされているのですか?

国連開発計画(UNDP) 駐日代表事務所 コンサルタント 小原 愛氏インタビュー2

 現在、BCtAはオーストラリア国際開発庁、オランダ外務省、スウェーデン国際開発庁、英国国際開発省、米国国際開発庁、UNDP、国連グローバルコンパクトの協力によって推進されており、途上国の低所得層が生産者・労働者・消費者などとして関わりを持ち、これらの人々の選択肢の拡大と企業の事業機会の拡大を同時に実現するビジネス(これを「インクルーシブ・ビジネス」と呼びます)を促進しています。
 具体的には、事業として成功しながら途上国開発に貢献していること、新しいアプローチを取り入れたビジネスモデルであること、そして、測定可能な効果を生み出すことなどの要件を満たす取り組みを承認し、その企業間や政府・関係機関などとの国境を超えた連携を促進しながら、企業が取り組む優れたインクルーシブ・ビジネスモデルやノウハウを国際社会で共有することによって、さらに新たな取り組みが生み出されるよう働きかけています。毎年9月に国連総会のサイドイベントとして開催されるBCtAの年次会合では、参加企業の取り組みを広く発信するとともにネットワーキングの場を設けたりしているほか、年間を通して世界各地で開催される様々なフィーラムなどでも参加企業の取り組みを広く紹介しています。また、新たな取り組みを行っている企業の発掘や、インクルーシブ・ビジネスを展開したいと考えている企業へのコンサルテーションも行っています。昨年は、BCtA参加企業の取り組みの効果測定を行い、レポートも発行しました。今年は、モバイル端末を使って、取り組みの効果を現場で測定できるような仕組みを参加企業に提供することを計画しています。

—現在、途上国開発とビジネスの関係性は世界的にどのような方向に進んでおり、日本にはどのようなことが求められているのでしょうか?

 世界的には、2000年頃から途上国開発におけると民間セクターとの連携が本格的に進みはじめ、ヨーロッパ諸国やアメリカがリードして、積極的にインクルーシブ・ビジネスが進められてきました。2015年はMDGsの達成期限であり、9月には、2015年以降の開発目標となる「ポスト2015開発アジェンダ」が採択されます。このアジェンダでは、今までよりも民間セクターが果たすべき役割がさらに大きくなることが想定されます。特に、水へのアクセス、再生可能エネルギー、農業、工業、インフラ、輸送の改善などの分野への期待は大きいです。
 実は日本は、この分野で世界から非常に期待されている国です。BCtAの事務局はイスタンブールにあり、その他は世界3カ所に担当者を配置していますが、そのうちの一つが東京です(そのほかは、ニューヨークとケニアのナイロビ)。
 日本の民間セクターに期待が寄せられている理由ですが、日本らしい先端的な技術やノウハウを活かしたユニークなビジネスモデルを持っているだけではなく、現地に入り込んで、とても丁寧に、長くその国の経済に貢献するビジネスを展開していることが多いからです。そのような日本のインクルーシブ・ビジネスは途上国側からも歓迎されていますし、世界からも注目されており、とくに日本企業が多くの実績を持つアジア諸国での大きな役割が期待されています。

—BCtAは今後どのような活動をされていくのでしょう?

国連開発計画(UNDP) 駐日代表事務所 コンサルタント 小原 愛氏インタビュー3

 これまでに、BCtAの参加企業は104社になりましたが、2015年中にさらに50社程度増やしたいと考えています。参加企業数を増やすことで、BCtAの国際的な発信力が増し、途上国開発にビジネスが貢献するより大きな流れを作っていくためです。
 ちなみに、現在の参加企業の45%が新興国の企業です。低所得国が力をつけて新興国となっていき、新興国の企業が自らインクルーシブ・ビジネスを行う動きが増えつつあります。ケニアに事務所を置いているというのも、こういう動きをさらに促進するためです。BCtAは、フィリピンでも活発に活動を進めていますが、フィリピン企業によるインクルーシブ・ビジネスの事例も出始めています。今後はこのような低所得国・新興国での活動をさらに拡大していく計画です。
 日本国内においては、BCtA参加企業にもご協力頂きながら、もっと多くの方々にBCtAの活動を知って頂けるよう、認知度向上に取り組みます。

—最後になりますが、POCプログラムがBCtAに承認されたポイントを教えて下さい。

 オーガニックコットンの良さは多くの企業や消費者がこれまでにも認めてきましたが、POCプログラムは、コットン生産者にとっては移行期間の3年間が障害になっているということを見つけ出したという視点、それを解決するビジネスモデルを組み立たこと、そしてアパレルメーカーなどと組むことで、効果的にそのコンセプトを広め、ビジネスとして成立させたという点です。
 そして、商社として国内外のネットワークや資金力がある伊藤忠商事と、クルックという消費者心理を理解し、マーケティング力のある企業がパートナーシップを組んで、この取り組みを効果的に進めているというのも評価のポイントとなりました。違う強みを持つ2社が組むことで、このようにユニークな、そして魅力ある製品を生み出すインクルーシブ・ビジネスを進めることができるというのは、他の企業にとっても参考となるケースです。POCを採用した製品を購入する消費者に、POCプログラムを通じて、途上国開発に貢献する機会を提供しているという点もよいですね。
 今後は、このユニークな日本発のインクルーシブ・ビジネスモデルをインドだけでなく、他の国にも拡げていって頂けると嬉しいですね。BCtAとしても、ぜひ何らかの形でお手伝いしていきたいと考えています。